【第二章】高卒で就職した会社で汎用旋盤の部署に配属、ここから汎用旋盤と長い付き合いが始まる。

金属加工に特化した会社に高卒で就職!

僕は工業高校の機械科を卒業後、

70人ほどの金属加工の会社に就職しました。

 

その会社は、機械加工に特化している会社で、

汎用旋盤、汎用フライス、

NC旋盤、複合旋盤、マシニングセンタ、5軸マシニング、

研磨、ワイヤー加工、放電加工などの

工作機械全般設備に加えて、

3次元測定器、画像測定器、面粗さ計などの測定器、

恒温室などの設備も非常に充実しており、

金属加工の仕事を学ぶには

非常に良い環境が整っている会社でした。

 

 

新入社員は男5人、女5人の合計10人。

 

入社式の後に外部講師、部長や課長、

各部署のリーダーによる1週間の新入社員研修があり、

主に社会人としてのマナーを教えてもらったり、

グループワークによる適正検査などがメインでありました。

 

 

1週間の研修後、それぞれ適性を見て

部長からどの部署に配属されるか発表があり、

同期がNC旋盤の部署、マシニングセンタの部署、

研磨の部署、汎用旋盤の部署などに

配属される発表を聞きながら、

ドキドキしながら自分の順番を待ってました。

 

そしてついに、

「ネイト君は汎用旋盤や汎用フライス盤の部署。しっかりと工作機械の基本を学んでください。」

と、自分の配属が決まりました。

 

 

「おおっ、僕は汎用旋盤やフライス盤がある部署か~」

 

僕は大卒の同期とともに、

汎用旋盤や汎用フライス盤のある、

部署に配属されることになりました。

 

 

汎用旋盤は高校の授業で使ったことがありましたが、

昔ながらのおじいさんみたいな職人さんが使うイメージ。

 

汎用旋盤でどんな製品を作るのかな?

汎用旋盤って難しいのかな?

いい先輩や上司がいたらいいな。

 

期待と不安が交錯する中、

僕の社会人生活がスタートしました。

 

プロとして初めて使った汎用旋盤は森精機のMSー850

汎用旋盤はすべての工作機械の基本。

まずはこの汎用旋盤から覚えようか!

 

配属された部署で、師匠となる方にそう言われて、

僕は汎用旋盤を覚えていくことになりました。

 

 

プロとして初めて使う汎用旋盤は、

森精機のMSー850という機械。

 

 

高校の授業で使った汎用旋盤とは

比べものにならないほど大きな機械です。

 

 

「機械でけ〜!やっぱプロは使うものが違うなぁ〜」

「しかも手元の目盛り見て削るんじゃなくて、デジタルカウンターが付いている!!」

「こんな大きな汎用旋盤を使って仕事をするんだ!!」

 

と目を輝かせてながら、

まじまじと汎用旋盤を眺めてました。

 

 

高校の授業で汎用旋盤を使っていましたが、

それはあくまで高校生レベル。

 

旋盤で加工してお金をもらう、

プロのレベルには程遠く、

師匠に汎用旋盤の基本的な使い方を

教えてもらいました。

 

1週間ほどかけて、

汎用旋盤の削り方の基礎や加工条件の計算方法、

バイト、チップ、ノギス、マイクロメーターなどの測定工具の使い方

三角法の図面の読み方

などなど、汎用旋盤を使う上で必要な

基礎的な事を教えてもらいました。

 

さらに機械の操作だけでなく、

「軍手を付けた状態で旋盤を使うと、巻き込まれる可能性があるから絶対にやったらダメ」

「チャックハンドルをチャックに差しっぱなしにしない」

「安全メガネをつけて加工する」

など、安全に関して重要な点も説明してもらい、

メモを取りながら説明を聞いていました。

 

 

テレビなどで見た職人のイメージで、

「仕事は見て覚えろ」って言われると思ってたけど、

「頑張って早く仕事覚えよう!!」と思えるくらい

丁寧に仕事を教えてくれるのは意外でしたね。

 

 

一通り説明を受けた後は、

実際に汎用旋盤を使って

師匠が考えてくれた練習課題を加工しながら、

汎用旋盤の操作などを覚えていきました。

 

 

課題は簡単なピンの加工でしたが、

直径10mmの部分に

0~-0.015mmの範囲で削るように

指示がありました。

 

「10.000~9.985mmの間に削らないといけないんだ・・・」

 

「えっ?0.015mmの範囲ってめっちゃすくないやん。髪の毛が約0,07mmだから、それの約5分の1?」

 

「こんな狭い範囲で削るのなんて、難しそう・・・・できるんかな?」

 

難しそうな顔をして課題を眺めていましたが、

まずは師匠がお手本を見せてくれるということで、

メモを片手に見学します。

 

 

慣れた手つきで材料をチャックに取り付けて、

回転レバーを上げてギュイ~ンと材料を回転させ、

寸法が10~9.985mmの間に入るように、

材料を削っていきます。

 

 

ハンドルを少しずつ回して、

寸法に入るように微調整して削っていき、

マイクロメーターやノギスで測定して、

あっという間に課題が完成!!

 

 

横でじっと見ていたけど、早すぎて正直、

何をやっているのかよくわからなかったですw

 

 

「とりあえず、機械使って削ってみようか?」

と師匠に言われて、機械を動かして削っていきます。

 

 

師匠に横で見てもらいながら、

おそるおそる回転レバーを回して機械を動かします。

 

回転レバーを入れたら、

ギュイイイイイインと音を立ててチャックが回り始める。

 

ハンドルを回してX軸の切り込みを入れて、

送りレバーを入れて切削。

 

ジィィィィィィという音を出しながら削れていき、

煙と油の匂いが辺りに籠る。

 

「おぉぉぉぉぉぉ~、切粉が出ながら削れている!!」

 

やばい、ただの丸棒が

目の前でどんどん削れて形になっていく。

 

なんだこの感覚、

めっちゃモノづくりしてる感じがして楽しい!!

 

師匠がやっていたのを真似しながら、

10~9.985mmの間に入るように削っていく。

 

削ったらマイクロメーターで測定。

 

「きちんと指定された寸法に入っているかな?」

 

「え~入ってないやん~。師匠これはダメですか?」

「これは9,97mmまで削りすぎてるからダメやね。もう1回やってみようか?」

 

 

「たった0,02mm寸法が出てないだけでダメなんて。なんてシビアな世界なんだ。」

 

予想以上の精密な世界に戸惑いながらも、

指定の寸法で加工できるまで何度も作り直しです。

 

「次はきちんとした寸法に加工しよう。」

 

そう思い、加工していきましたが、

何度も何度も加工しても、

指定された10~9.985mmの範囲に

削ることができません。

 

師匠と同じように削っているはずなのに、

9,98mmになったり、

マイクロメーターを0,5mm読み間違えて

9,49mmになってたりと散々です。

 

朝から夕方までかれこれ30回以上削ったけど、

1度も指定された範囲にうまく削ることができない。

 

一緒に汎用旋盤を使っている大卒の同期は、

もう課題を完成させるところまでいってます。

 

しかし僕は、

公差を決めることができずに

次に進めない。

 

「俺、もしかしてセンスない?」

真剣に悩んで凹み始めました。

 

 

その時、再び師匠が登場して、

「難しかったかな?じゃあ誰でも同じように削れる、魔法の手順を説明しよう」

というわけで、誰でも同じように

精度が出る削り方を教えてくれました。

 

「まず最初に面出しして寸法をデジタルスケールに打ち込む」

次に「○ミリ手前まで削る。そして・・・・・・・」

という感じで安定して削る手順を教えてもらい、

その作業手順通りに自分もやってみたら

 

 

簡単に指定された寸法の範囲内に、

削ることができました!!

 

「やったー簡単に狙った寸法に削れた!今までの苦労はなんだったんだw」

 

 

きちんとした手順で加工したら、誰がやっても同じように加工できるよ。」

 

そういう笑いながら教えてくれる師匠。

 

「ほんとかな?」と思い、もう一度同じように削ってみると、

今まで苦労したのがウソのように、

10~9.985mmの範囲に入るんですよ。

 

何度やっても!!

 

試しに違うやり方をしたら、

寸法に0.01ミリ前後のバラツキがあって安定しない。

 

「こ、これはすごい削り方だ!!」

 

今までできなかったことが

できるようになるのがめっちゃうれしくて、

教えてもらった事を体で覚えるために、

練習を繰り返しました。

 

そして1週間の汎用旋盤の研修を終えて、

基礎的な加工ができるようになり、

実際に仕事をするようになりました。

汎用旋盤が超楽しいくて削りまくる日々!

 

汎用旋盤を練習して、1週間経った感想。

 

「汎用旋盤で加工するのってめっちゃ面白いけど、作るのに思ったより時間がかかるな」

 

「師匠や先輩のように、早く加工できるように頑張ろう!!」

 

そう思って新しい仕事をもらい、

汎用旋盤を使って加工していきます。

 

・早く汎用旋盤を使って仕事ができるようになりたい!

 

・大卒の同期より仕事ができるようになって給料で追い抜きたい!

 

・先輩や師匠に早く追いつきたい!!

 

そのような気持ちを胸に秘め、

必死に作業して新しい加工方法を覚えていきます。

 

最初の1週間で学んだ

基礎的な加工法に加えて、

溝入れ、内径ボーリングなどの加工、

製品の形状に合わせた加工方法

鉄、ステン、アルミなど材質に合わせた加工条件の設定などを、

師匠に教えてもらい、

少しでも早く覚えれるように

何度も復習して頑張ってきました。

 

 

新しい加工を教えてくれる時、

師匠が僕に合わせて、

分かりやすいように説明してくれたので、

工業高卒の僕の頭でも理解しやすく、

とても覚えやすかったです。

 

 

当時は分からなかったですが、

「見て覚えろ」と言うだけの、

まともに指導できない色々な会社の職人を

見てきた今だからこそ、

ほんと師匠に恵まれてありがたかったと

しみじみ思います。

 

 

金属の丸棒を汎用旋盤に取り付けて回転させ、

刃物を丸棒に当ててリンゴの皮を剥くように削っていく。

 

目の前でバリバリバリ~っと音を立ててながら削れていき、

パラパラパラ~と落ちていく切粉。

 

大まかな形に削る荒加工や、

精密な寸法に仕上げる仕上げ加工。

 

0,01mmの単位で切り込みを微調整して削っていき、

厳しい寸法公差に入ったら、

思わずガッツボーズ!

 

 

最初は黒皮の付いた丸棒だったものが、

自分の手で削ることで目の前でどんどん変化していく。

 

 

汎用旋盤を使ったモノづくりが、

めっちゃ楽しい!!

 

 

汎用旋盤を使って加工していくのが

楽しくて楽しくてしかたなく、

新しい技術を教えてもらう度に

日々成長できることを実感しており、

非常に楽しく充実してを送っていました。

 

 

しかしその楽しくて充実した日々も長くは続かず、

汎用旋盤を覚えていく上で

必ずぶち当たる壁が

僕の前に立ちはだかりました。

 

 

第三章へ続く。

【第三章】不良品が減って仕事が3倍早くなった!これが汎用旋盤の作業手順書の効果だ!仕事の難易度が上がると不良品も増えていく・・・・。 しかし、新しい仕事を覚えていく過程で、 難易度が上がるにつれて、 不良品も多く...